Volume 1

1st SHOT 「どろぼうの都」

ジン【Gin】
  作中では“JING”。俗に「松ヤニの匂い」と言われる独特の香りは杜松(ネズ)の実(ジュニパー・ベリー)等の薬草・香草(ハーブ)によってつけられている。アルコール度数35〜57度と非常に強い辛口のホワイトスピリッツ。 もともとはオランダの医師シルビウスが薬酒として開発したものだがその爽やかな旨さに処方された“薬”を1日で飲み干してしまう患者が続出、商品化された。それが1689年オランダから迎えられて英国王となったウィリアム3世と共にイギリスに渡り、ロンドンにおいて爆発的な人気酒となる。
慣れると病みつきになる植物性香味(ボタニカル・フレーバー)はブランドによって大きく違い、ジュニパーベリーやスパイス系の香り(薬臭い)の強いのはゴードン、シトラス系のフルーティーで華やかな香りの強いのがボンベイ・サファイア、ニュートラルでウォッカに近いタンカレー等好みの分かれるところ。

キール【KIR】
 フランス・ブルゴーニュ地方ディジョン市の市長キャノン・フェリックス・キール氏が特産のカシスリキュール(これについてはカシスの項にて詳述)と辛口の白ワイン(アリゴテ種のブドウで造られるブルゴーニュ・アリゴテ)を使って考案したカクテル。 第2次世界大戦直後市長に就任したキール氏は市の公式レセプション用ドリンクにこれを必ず用意し、市民達はこの口あたりのよいカクテルに市長の名をつけてキールと呼ぶようになった。 有名カクテルだけに、ワインにカシス風味をつけたプレミックスタイプのものも市販されている。
レシピ:グラスにカシスリキュールを30cc入れ、冷やした白ワインで満たして軽く混ぜる。カシスの量 は好みで加減しても良い。


コニャック【Cognac】
 フランス西南部コニャック地方において、伝統に基づいた製法によって造られる高級ブランデー。それと双璧をなすのが南仏ピレネー山脈の麓が産地となっているアルマニャック。フランスのそれ以外の地域で造られるブランデーはフレンチ・ブランデーと総称される。フレンチブランデーの「ナポレオン」には熟成年数などの基準が無く、粗悪な原酒を用いたものもあるので要注意。

ウォッカ【VODKA】
 言わずと知れたロシア(発祥はポーランドという説もある)の酒だが、現在生産量 ・消費量ともにアメリカが世界一。ロシア語で水を意味するヴァダーの愛称形がウォッカで、「お水ちゃん」位 の意味。ただしアルコール度数は40度から96度と強烈なスピリッツ
特徴は白樺や椰子を焼いた炭(活性炭)で濾過することで、それによって雑味の無いクリスタル・クリアな味わいになる。原料は主にライ麦やじゃがいも、コーン等。アルコールそのものの甘味(エチルアルコールはブドウ糖の組成がわずかに変化したものであるため、純度が高くなればなる程ほのかな甘味を感じさせる)を楽しむ酒。またさまざまなジュースと相性が良く、何でもかんでもコーラやセブンナップやトマトジュースで割ってしまうアメリカで流行したのは当然とも言える。


キール・ロワイヤル【KIR ROYAL】
 キールのベースを白ワインからシャンパンに変えた「王家風」キール。ちなみにキール・ロワイヤルのリキュールをカシスからフランボワーズ(木いちご)に変えたのはキール・アンペリアル(皇帝風キール)。
レシピ:グラスにカシスリキュールを30cc入れ、冷やしたシャンパンで満たしてごく軽く混ぜる。カシスの量 は好みで加減しても良い。


シードル【Cidre】
 りんごを原料とするフルーツワインの一種。ワインと同じく非発泡性のものもあるが輸入されているものはほとんど発泡性のあるもの。国産ならニッカのものが旨い。ちなみにニッカの社名は創業当時ウィスキーを出荷出来るまで熟成させる間のつなぎ資金作りにりんごジュースを製造していたことからつけた「日本果 汁」から来ている。
英語ではサイダー(cider)で、これを真似てノンアルコールで造られたのが日本独特のソフトドリンク・サイダー(これは英語でsoda pop)である。


2nd SHOT「ゆーれい船の謎」

ブルーハワイ【Blue HAWAII 】
 いわゆるトロピカル系カクテルの一種。ブルーキュラソーの青が涼しげ。
レシピ:ホワイトラム30cc、ブルーキュラソー15cc、パイナップルジュース30cc、レモンジュース15ccをシェークしてクラッシュアイスを詰めたゴブレットに注ぐ。パイナップルや蘭の花を飾ってストローを添える。


ロゼ【Rose】
 ロゼワイン。ワインの製造工程でぶどうを潰し、果皮の色素が果 汁の中にピンク色に溶け出して来た時点で搾ることで赤と白の中間の色合いのワインになる(潰してすぐ搾れば黒いぶどうからも白ワインが出来る)。ちなみにフランスでは赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造ることはシャンパン以外では禁止されています。

3rd SHOT 「王ドロボウの条件」

グラッパ【Grappa】
 ワインの搾り粕を再発酵させ、蒸留した「粕取りブランデー」。フランス産のものをマール、イタリア産のものをグラッパと呼ぶ。通 常樽で熟成させず、透明なまま出荷される。普通のブランデーに比べるとくせが強く好みが分かれる酒。
食後に飲まれることが多く、エスプレッソにコーヒーシュガー(ザラメ糖)を入れてかきまぜずに飲んだ後の、シュガーが溶け残った温かいカップにそのままグラッパを注いでストレートで飲るというのがイタリア人お気に入りのスタイルらしい。


モルテカロン【Morte Calon】
 何かこれもあったなーと思って調べてみたら惜しい!「モンテカルロ」ならウィスキーベースのカクテル。モンテカルロはギャンブルのさかんなモナコの都市ですので、これはそのアナログラム(文字替え)でしょう。ちなみに「カジノ」というカクテルもあります。

トム&ジェリー【Tom & Jerry】
 卵を使ったホットカクテル。エッグノッグの一種。
もともとはアメリカ南部に伝わるクリスマス・ドリンクだが現在はクリスマスに限らず広く飲まれている。
カクテル名は猫とネズミの漫画からでは無く、マティーニの作者と言われているジェリー・トーマス(19世紀末にサンフランシスコで活躍した名バーマン。マティーニの作者には異説もある)が自作のカクテルに自分の名前をつけたと伝えられる。
レシピ:卵1個分の卵黄と卵白を別々に泡立て、卵黄に砂糖2tsp.、卵白を加え、ダークラム30cc、ブランデー15ccを加えて温めたタンブラーに移して熱湯で満たし軽く混ぜる。好みですりおろしたナツメグを振りかける。